火災を含む災害時に停電になると、安全に避難することができなくなります。
そのため居室や避難経路には、非常用の照明装置の設置が必要となる建築物の種類や規模の規定があります。
そこで、この記事では、
はてな
- 非常用の照明装置が必要な建築物
- 非常用の照明装置の設置が不要な部分(緩和)
について、解説します。
非常用の照明装置の設置が必要な建築物
- 法別表第1(い)欄(1)項から(4)項までに掲げる用途に供する特殊建築物
- 階数が3以上で延べ面積が500㎡を超える建築物
- 第116条の2第1項第1号に該当する窓その他の開口部を有しない居室
- 延べ面積が1000㎡を超える建築物
- 1から4の居室から地上に通ずる廊下、階段そのたの通路(避難経路)
まとめると下記のとおりです。
建築物の種類によって必要
- 法別表第1(い)欄(1)項から(4)項までに掲げる用途に供する特殊建築物
- 第116条の2第1項第1号に該当する窓その他の開口部を有しない居室
建築物の規模によって必要
- 階数が3以上で延べ面積が500㎡を超える建築物
- 延べ面積が1000㎡を超える建築物
非常用の照明装置が不要な建築物および建築物の部分
上記に記載した建築物であっても、下記の部分には、設置が不要となります。
- 一戸建の住宅又は長屋若しくは共同住宅の住戸
- 病院の病室、下宿の宿泊室又は寄宿舎の寝室その他これらに類する居室
- 学校等
- 採光上有効に直接外気に開放された通路
- 避難階又は避難階の直上階若しくは直下階の居室で避難上支障がないものその他これらに類するものとして国土交通大臣が定めるもの
避難階又は避難階の直上階若しくは直下階の居室で避難上支障がないものその他これらに類するものとして国土交通大臣が定めるもの(平成12年告示第1411号)
告示で設置が不要と定められているのは、下記のとおりです。
一 採光上、無窓ではない居室で、次のイ又はロのいずれかに該当するもの
イ 避難階の居室で屋外への出口の一に至る歩行距離が30m以下
ロ 避難階の直下階又は直上階の居室で、屋外への出口又は令第123 条第2 項に規定する屋外に設ける避難階段に通ずる出入口に至る歩行距離が20m以下であり、かつ、避難上支障がないもの
二 床面積が30㎡以下の居室(ふすま、障子その他随時開放することができるもので仕切られた2 室は、1 室とみなす。)で、地上への出口を有するもの又は当該居室から地上に通ずる建築物の部分が次のイ又は口に該当するもの
イ 令第126 条の5 に規定する構造の非常用の照明装置を設けた部分
ロ 採光上有効に外気に開放された部分
この告示で設置不要となるのは、居室のみです。避難経路には、設置が必要となります。
法文の見方としては、
法第35条→令第126条の4→令第126条の4→H12建告1411号
となります。
法文等は参考で記載している部分もありますが、全文を確認される場合は、
お手持ちの法令集等をご確認ください。
条文
法文の見方としては、
法第35条→令第126条の4→令第126条の4→H12建告1411号
となります。
法文等は参考で記載している部分もありますが、全文を確認される場合は、お手持ちの法令集等をご確認ください。
第35条(特殊建築物等の避難及び消火に関する技術的基準)
別表第1(い)欄(1)項から(4)項までに掲げる用途に供する特殊建築物、階数が3以上である建築物、政令で定める窓その他の開口部を有しない居室を有する建築物又は延べ面積(同一敷地内に2以上の建築物がある場合においては、その延べ面積の合計)が1000㎡をこえる建築物については、廊下、階段、出入口その他の避難施設、消火栓(せん)、スプリンクラー、貯水槽(そう)その他の消火設備、排煙設備、非常用の照明装置及び進入口並びに敷地内の避難上及び消火上必要な通路は、政令で定める技術的基準に従つて、避難上及び消火上支障がないようにしなければならない。
法第35条では、対象となる建築物と建築物の部分について記載されています。
また、詳細は施行令に委任され、施行令に記載されています。
令第126条の4(設置)
法別表第1(い)欄(一)項から(四)項までに掲げる用途に供する特殊建築物の居室、階数が3以上で延べ面積が500㎡を超える建築物の居室、第116条の2第1項第1号に該当する窓その他の開口部を有しない居室又は延べ面積が1000㎡を超える建築物の居室及びこれらの居室から地上に通ずる廊下、階段その他の通路(採光上有効に直接外気に開放された通路を除く。)並びにこれらに類する建築物の部分で照明装置の設置を通常要する部分には、非常用の照明装置を設けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する建築物又は建築物の部分については、この限りでない。
一 一戸建の住宅又は長屋若しくは共同住宅の住戸
二 病院の病室、下宿の宿泊室又は寄宿舎の寝室その他これらに類する居室
三 学校等
四 避難階又は避難階の直上階若しくは直下階の居室で避難上支障がないものその他これらに類するものとして国土交通大臣が定めるもの
設置が必要となる建築物または建築物の部分
令第126条の4をまとめると
- 法別表第1(い)欄(1)項から(4)項までに掲げる用途に供する特殊建築物
- 階数が3以上で延べ面積が500㎡を超える建築物
- 第116条の2第1項第1号に該当する窓その他の開口部を有しない居室
- 延べ面積が1000㎡を超える建築物
- これらの居室から地上に通ずる廊下、階段その他の通路(採光上有効に直接外気に開放された通路を除く。)並びにこれらに類する建築物の部分
これらの建築物の居室およびその居室から地上に通ずる避難経路に非常用の照明装置の設置が必要となります。
窓その他の開口部を有しない居室
第116条の2(窓その他の開口部を有しない居室等)
法第35条(法第87条第3項において準用する場合を含む。第127条において同じ。)の規定により政令で定める窓その他の開口部を有しない居室は、次の各号に該当する窓その他の開口部を有しない居室とする。
一 面積(第20条の規定より計算した採光に有効な部分の面積に限る。)の合計が、当該居室の床面積の20分の1以上のもの
二 開放できる部分(天井又は天井から下方80cm以内の距離にある部分に限る。)の面積の合計が、当該居室の床面積の50分の1以上のもの
まとめると、よく聞く内容で、
1号が採光が床面積の1/20未満(採光無窓)の居室
2号が排煙が床面積の1/50未満(排煙無窓)の居室
のどちらの開口部もない居室となります。どちらかがあればOKです。
用途、規模で、施行令第126条の2の排煙設備の設置の規定がかからなくても、令第116条の2の規定を満たしていなければ、避難施設の規定がかかってくるので注意する必要があります。
無窓居室の種類によって、追加でかかる規定が違いますので、確認をしてください。
採光上有効に直接外気に開放された通路を除くとは
当通路の開口部が概ね全体にわたって令第20条の採光上有効な部分に該当し、手すり・腰壁のみで垂れ壁等がなく、排煙上支障がない通路となります。
例えば、屋外の開放廊下や屋外階段のような、外気に十分開放され、直接外から明るさを確保できる部分となります。
しかし、屋外開放廊下及び屋外階段でも、隣地境界線および同一敷地内の建築物等に近接している場合は設置が必要となります。(基準は特定行政庁によって違います)
設置免除の建築物または建築物の部分
上記に該当する場合でも、令第126条の4のただし書きの部分は設置不要となります。
令第126条の4のただし書き
一 一戸建の住宅又は長屋若しくは共同住宅の住戸
二 病院の病室、下宿の宿泊室又は寄宿舎の寝室その他これらに類する居室
三 学校等
四 避難階又は避難階の直上階若しくは直下階の居室で避難上支障がないものその他これらに類するものとして国土交通大臣が定めるもの
1号、2号
特定少数の人が毎日就寝している小規模空間となり、建築物の避難経路がわかっているため免除されます。
二号のその他これらに類する居室とは
就寝の用途に供する建築物のうち、特定で少数である寄宿舎等の用途および病院等と同様の看護体制がされており、緊急時の避難の補助・救助等の体制も適切に行える診療所、老人ホーム等の居室となります。
3号
利用形態から火災の発生が少なく、大規模空間や避難上支障が少ないため、免除されています。
また、体育館やスポーツ練習場等で、観覧席を設けた部分については、設置が必要となります。
4号
避難階又は避難階の直上階若しくは直下階の居室で避難上支障がないものその他これらに類するものとして国土交通大臣が定めるも(H12建告1411号)
平成30年に改正がありました。赤下線が改正部分です。
平成12 年5 月31 日建設省告示第1411 号
建築基準法施行令(昭和25 年政令第338 号)第126条の4 第4号の規定に基づき、非常用の照明装置を設けることを要しない避難階又は避難階の直上階若しくは直下階の居室で避難上支障がないものその他これらに類するものを次のように定める。
建築基準法施行令(以下「令」という。)第126 条の4 第4号に規定する避難階又は避難階の直上階若しくは直下階の居室で避難上支障がないものその他これらに類するものは、次の各号のいずれかに該当するものとする。
一 令第116 条の2 第1項第1号に該当する窓その他の開口部を有する居室及びこれに類する建築物の部分(以下「居室等」という。)で、次のイ又はロのいずれかに該当するもの
イ 避難階に存する居室等にあっては、当該居室等の各部分から屋外への出口の一に至る歩行距離が30m以下であり、かつ、避難上支障がないもの
ロ 避難階の直下階又は直上階に存する居室等にあっては、当該居室等から避難階における屋外への出口又は令第123 条第2 項に規定する屋外に設ける避難階段に通ずる出入口に至る歩行距離が20m以下であり、かつ、避難上支障がないもの
二 床面積が30㎡以下の居室(ふすま、障子その他随時開放することができるもので仕切られた2 室は、1 室とみなす。)で、地上への出口を有するもの又は当該居室から地上に通ずる建築物の部分が次のイ又は口に該当するもの
イ 令第126 条の5 に規定する構造の非常用の照明装置を設けた部分
ロ 採光上有効に外気に開放された部分
1号
採光(1/20)、排煙(1/50)を有する居室で、避難階の居室等は、当該居室等の各部分から屋外への出口の一に至る歩行距離が30m以下であり、かつ、避難上支障がないもの
避難階の直下階又は直上階の居室等は、当該居室等から避難階における屋外への出口又は屋外避難階段に通ずる出入口に至る歩行距離が20m以下であり、かつ、避難上支障がないもの
2号
平成30年3月29日に改正され、設置を要しない居室が追加されました。
イ 床面積が30㎡以下の居室で、地上への出口を有するもの
ロ 床面積30㎡以下の居室で、その居室の避難経路に非常用照明装置の設置または採光上有効に直接外気に開放されたもの
あくまでも、告示に該当する居室が設置不要となり、避難経路には、非常用の照明装置の設置が必要となります。
まとめ
この記事では、
はてな
- 非常用の照明装置が必要な建築物
- 非常用の照明装置の設置が不要な部分(緩和)
について解説しました。長くなりましたので、改めてまとめます。
非常用の照明装置の設置が必要な建築物
- 法別表第1(い)欄(1)項から(4)項までに掲げる用途に供する特殊建築物
- 階数が3以上で延べ面積が500㎡を超える建築物
- 第116条の2第1項第1号に該当する窓その他の開口部を有しない居室
- 延べ面積が1000㎡を超える建築物
- 1から4の居室から地上に通ずる廊下、階段そのたの通路(避難経路)
非常用の照明装置が不要な建築物および建築物の部分
上記に記載した建築物であっても、下記の部分には、設置が不要となります。
- 一戸建の住宅又は長屋若しくは共同住宅の住戸
- 病院の病室、下宿の宿泊室又は寄宿舎の寝室その他これらに類する居室
- 学校等
- 採光上有効に直接外気に開放された通路
- 避難階又は避難階の直上階若しくは直下階の居室で避難上支障がないものその他これらに類するものとして国土交通大臣が定めるもの
避難階又は避難階の直上階若しくは直下階の居室で避難上支障がないものその他これらに類するものとして国土交通大臣が定めるもの(平成12年告示第1411号)
告示で設置が不要と定められているのは、下記のとおりです。
一 採光上、無窓ではない居室で、次のイ又はロのいずれかに該当するもの
イ 避難階の居室で屋外への出口の一に至る歩行距離が30m以下
ロ 避難階の直下階又は直上階の居室で、屋外への出口又は令第123 条第2 項に規定する屋外に設ける避難階段に通ずる出入口に至る歩行距離が20m以下であり、かつ、避難上支障がないもの
二 床面積が30㎡以下の居室(ふすま、障子その他随時開放することができるもので仕切られた2 室は、1 室とみなす。)で、地上への出口を有するもの又は当該居室から地上に通ずる建築物の部分が次のイ又は口に該当するもの
イ 令第126 条の5 に規定する構造の非常用の照明装置を設けた部分
ロ 採光上有効に外気に開放された部分
この告示で設置不要となるのは、居室のみです。避難経路には、設置が必要となります。
以上となりますが、これを参考に特定行政庁に確認していただけたらと思います。