建築基準法では、法第48条と法別表第2によって、用途地域ごとで建築できる建築物や建築できない建築物の種類が決められています。
法別表2だけでなく、施行令にも記載しているため、少し読みにくい条文となっています。
そのため、不動産業の方や建築士の方から、
はてな
- 行政に相談したら工場が建築できないといわれた!
- どこの用途地域なら工場が建築可能?
- 用途地域ごとで建築できる工場の種類は?
といった話をときどき聞きます。
そういった疑問を解決するために、この記事では、
ポイント
- 工場が建築できる用途地域
- 用途地域ごとに建築できる工場
- 作業場の床面積
- 原動機
について、解説しいます。
これを参考に特定行政庁に確認していただけたらと思います。
なお、工場について別の記事で解説します。
概要
工場が建築できる用途地域を条文だけで説明するとわかりにくいです。
そこで、工場が建築できる用途地域を表にまとめましたので、先に表をご確認ください。
表の見方としては、右側になるにつれて用途規制が緩くなり、建築できる工場の範囲が増えてます。(田園住居地域は除きます。)
自動車修理工場の建築できる用途地域や工場についての解説は、後日記事にしたいと思います。
工場が建築できる用途地域
先ほどの表の解説です。
第1種・第2低層住居専用地域、第1種中高層住居専用地域
延べ面積・階数に関係なく、建築不可です。
一部、令第130条の3に該当する兼用住宅は建築可能ですので、下部にて解説します。
第2種中高層住居専用地域
以下の3つを満たすものが建築可能です。
- パン屋、米屋、豆腐屋、菓子屋その他これらに類する食品製造業を営むもの(一部不可有)
- 作業場の床面積が50㎡以内
- 原動機の出力の合計が0.75KW以下
第1種・第2種住居住居地域・準住居地域
原動機を使用する工場で作業場の床面積が50㎡以内が可能です。
なお、上記に該当しない工場で、原動機を使用しない工場は、第1種住居地域から建築可能です。
田園住居地域
農産物の生産、集荷、処理又は貯蔵
(農産物の乾燥等の処理をする際に、著しい騒音を発生するものとして国土交通大臣が指定するものを除く)(第130条の9の3)
近隣商業地域、商業地域
原動機を使用する工場で作業場の床面積が150㎡以内が可能です。
(日刊新聞の印刷所で作業場の床面積が300㎡以内が可能)
準工業地域、工業地域、工業専用地域
原動機を使用する工場で作業場の床面積の制限はなしです。
工場の種類については、別表2各項をご確認ください。
建築物の延べ面積・作業場の床面積・作業内容から確認
延べ面積、作業場の床面積面積、作業内容から建築可能な用途地域をまとめました。
㎡は作業場の床面積、KWは原動機の出力の合計のことをいいます。
延べ面積・階数に関係なく、建築不可
第1種・第2低層住居専用地域、第1種中高層住居専用地域
一部、令第130条の3に該当する兼用住宅は建築可能ですので、下部にて解説します。
食品製造業(パン屋、米屋、豆腐屋、菓子屋等)50㎡以内、0.75KW以下
第2種中高層住居専用地域
原動機を使用する工場で作業場の床面積が50㎡以内
第1種・第2種住居住居地域、準住居地域
原動機を使用する工場で作業場の床面積が150㎡以内
近隣商業地域、商業地域
日刊新聞の印刷所で作業場の床面積が300㎡以内
近隣商業地域、商業地域
原動機を使用する工場で作業場の床面積の制限はなし(詳細は別表2各項参照)
準工業地域、工業地域、工業専用地域
一覧表
わかりにくい方は下の表をご確認ください。
条文の解説
それでは、各用途地域の区分ごとに解説していきます。
法別表2では、用途地域ごとに建築できるものと建築できないものが記載されています。
第1種・第2低層住居専用地域、第1種中高層住居専用地域
第1種・第2種低層住居専用地域、第1種中高層住居専用地域は、法別表2の(い)(ろ)(は)欄に建築できる建築物が記載しています。
単独の工場は建築不可
法別表第2のそれぞれの欄を確認しても工場はないです。
よって、単体で工場を建築することはできません。
第1種低層住居専用専用地域に建築できる兼用住宅【施行令第130条の3】
単独で工場を建築することはできないと説明しました。
しかし、法別表第2(い)第2号では、【住宅で事務所、店舗その他これらに類する用途を兼ねるもののうち政令で定めるもの】と記載しています。
この中に工場(原動機を使用する作業場)が含まれています。
よって、施行令施行令第130条の3に書いてある兼用住宅は建築可能です。
施行令第130条の3
住宅は、延べ面積の2分の1以上を居住の用に供し、かつ、次の各号のいずれかに掲げる用途を兼ねるもの(これらの用途に供する部分の床面積の合計が50㎡を超えるものを除く。)とする。
よって、まとめると以下のとおりです。
- 延べ面積の半分以上が住宅
- 次の各号の用途を兼ねるもの
- 次の各号の延べ面積の合計が50㎡以下
- 建築できる兼用住宅の条件(用途:工場に類するもの)【施行令第130条の3各号】
原則、工場はできませんが、令第130条の3の各号に書いてある建築物は建築可能です。(原動機の出力の合計が0.75KW以下)
- (第4号)洋服店、畳屋、建具屋、自転車店、家庭電気器具店
- (第5号)自家販売のために食品製造業を営むパン屋、米屋、豆腐屋、菓子屋
- (第7号)美術品、工芸品を製作するアトリエ、工房
兼用住宅で事務所部分等と兼用する部分の面積は面積按分する
兼用住宅であれば、住宅部分と廊下、玄関、便所等を兼用(共用)している場合があります。
その兼用部分をどれだけ50㎡等に含めるかについてですが、面積按分をします。
住宅(面積制限を受けていない用途の部分)と事務所(面積制限を受ける部分)との面積割合を兼用(共用)部分に乗じて、その面積をそれぞれの専用部分に加算します。
面積按分の例(事務所兼用住宅延べ面積140㎡の場合)
それぞれの面積は住宅部分90㎡、事務所部分30㎡、兼用部分20㎡とします。
まず、住宅部分と事務所部分の面積割合は90㎡と30㎡ですので、75%と25%となります。
兼用部分は20㎡ですので、それぞれの割合をかけると、20㎡×75%=15㎡と20㎡×25%=5㎡となります。
住宅部分の面積は90㎡+25で115㎡となり、事務所部分の面積は、30㎡+5㎡=35㎡となります。
という計算をしていただき、面積制限を確認していただくようになります。
第2種中高層住居専用地域に建築できる工場
第2種中高層住居専用地域に建築できない建築物が法別表第2の(に)に書かれています。
また、第2号に【工場(政令で定めるものを除く。)】と記載されています。
よって、原則、工場は建築できないですが、政令に定めている工場は建築可能ということです。
施行令第130条の6
法別表第2(に)項第2号(・・・)の規定により政令で定める工場は、パン屋、米屋、豆腐屋、菓子屋その他これらに類する食品製造業を営むもの(同表(と)項第3号(2の2)又は(4の4)に該当するものを除く。)で、作業場の床面積の合計が50㎡以内のもの(原動機を使用する場合にあつては、その出力の合計が0.75KW以下のものに限る。)とする。
よって、以下の3つを満たすものが建築可能です。
- パン屋、米屋、豆腐屋、菓子屋その他これらに類する食品製造業を営むもの(一部不可有)
- 作業場の床面積が50㎡以内
- 原動機の出力の合計が0.75KW以下
第1種・第2種住居住居地域・準住居地域に建築できる工場の種類
第1種・第2種住居地域・準住居地域に建築できない建築物は、法別表第2(ほ)と(へ)と(と)に記載しています。
その中で工場については、(へ)第2種住居地域の第2号に【原動機を使用する工場で作業場の床面積の合計が50㎡を超えるもの】と、(と)準住居地域の第2号に【原動機を使用する工場で作業場の床面積の合計が50㎡を超えるもの(作業場の床面積の合計が150㎡を超えない自動車修理工場を除く。)】と記載しています。
第2種住居地域の第2号と準住居地域の第2号の違い
第2種住居地域と準住居地域の違いは、法別表第2(と)第2号の()の中に作業場の床面積の合計が150㎡を超えない自動車修理工場を除く。と記載しています。
そのため、準住居地域には、作業場の床面積の合計が150㎡を超えない自動車修理工場は建築可能となります。
よって、第1種・第2種住居地域、準住居地域では、原動機を使用する工場で作業場の床面積が50㎡以内の工場が建築が可能となります。
田園住居地域に
田園住居地域に建築できない建築物が法別表第2の(ち)に書かれています。
また、第2号に【農産物の生産、集荷、処理又は貯蔵に供するもの(政令で定めるものを除く。)
】と記載されています。
施行令第130条の6第2号
法別表第二(ち)項第2号(法第87条第2項又は第3項において法第48条第8項の規定を準用する場合を含む。)の規定により政令で定める建築物は、農産物の乾燥その他の農産物の処理に供する建築物のうち著しい騒音を発生するものとして国土交通大臣が指定するものとする。
まとめると、田園住居地域で建築可能な工場は、著しい騒音を発生させない農産物の処理を行う工場となります。
近隣商業地域、商業地域に建築できる工場
商業地域に建築できない建築物が法別表第2の(ぬ)に書かれています。
第2号:床面積
原動機を使用する工場で作業場の床面積の合計が150㎡を超えるもの(日刊新聞の印刷所及び作業場の床面積の合計が300㎡を超えない自動車修理工場を除く。)とあります。
第3号:建築できない工場の種類
次に掲げる事業(特殊の機械の使用その他の特殊の方法による事業であつて商業その他の業務の利便を害するおそれがないものとして政令で定めるものを除く。)を営む工場
第3号には、工場の種類が記載していおり、種類が多いため、法別表第2(ぬ)第3号をご確認ください。
よって、近隣商業地域と商業地域には、原動機を使用する工場で作業場の床面積が150㎡以内が可能です。(法別表第2(ぬ)第1号、第3号を除く。)
※日刊新聞の印刷所で作業場の床面積が300㎡以内も建築可能です。
準工業地域、工業地域、工業専用地域に建築できる工場
工業系の用途地域は、原則工場は建築できます。
しかし、危険度の高い工場や特殊な工場については、地域によってはできない工場もあります。
その工場の種類として、法別表第2の(る)準工業地域、(を)工業地域、(わ)工業専用地域ごとに記載していますので、ご確認ください。
作業場の床面積とはどこの部分?
各用途地域で、作業場の床面積が50㎡以下、150㎡以下という基準があります。
しかし、建築物によっては、どこが作業場で、どこが通路、倉庫かがわかりにくい場合があります。
そこで、ここでは作業場の部分の説明をします。
作業場に該当する例
作業場の部分の取扱いは以下のとおりです。
- 建築物内の製造、加工、仕上、仕分、包装、荷造等の作業を一定期間継続してもこなうことを目的とする場所
- 人が作業する部分だけでなく、機械を設置する部分も含む
- 製品をつくる工程で貯蔵すると同時に、製品に質的変化起こさせる場所(凝固させる冷蔵庫など)
作業場に該当しない例
工場内でも、下記に該当する場合は、作業場に該当しません。
- 工場内にある、倉庫、事務所スペース等
- 工場の設備機械室
- 人や車両が通行する部分で、間仕切壁等で明確に区画された部分
また、作業場とその他の部分を明確な間仕切り壁等がない形状で分ける場合は、作業場に含まれる可能性があります。
よって、判断に迷う場合は、事前に特定行政庁や民間確認検査機関とご相談ください。
原動機を使用する工場の原動機とは
工場の作業に必要な工程で、その中で使用する機械(原動機)は含みます。
原動機に含むもの
- 工場の中の原動機はもちろん、敷地内の屋外で使用される原動機
- 大型機械だけでなく、小型電動工具(ドリル、グラインダー等)も含む
- 作業で必要な冷凍装置(冷やして固める等)は含む
原動機に含まないもの
- 作業場の温度管理のために設置する空調設備
- 作業に関係ない、事務所や休憩所に設置する冷蔵庫
確認申請の添付書類として、原動機の種類や台数等を記載するようになりますので、事前にかくにんしておきましょう。
まとめ
解説することが多くとても長い記事となりましたので、この記事をまとめます。
まずは、この記事で解説するこの記事では、
ポイント
- 工場が建築できる用途地域
- 用途地域ごとに建築できる工場
- 作業場の床面積
- 原動機
について、解説しいます。
用途地域ごとに建築できる工場の一覧表
作業場に該当する例
- 建築物内の製造、加工、仕上、仕分、包装、荷造等の作業を一定期間継続してもこなうことを目的とする場所
- 人が作業する部分だけでなく、機械を設置する部分も含む
- 製品をつくる工程で貯蔵すると同時に、製品に質的変化起こさせる場所(凝固させる冷蔵庫など)
作業場に該当しない例
- 工場内にある、倉庫、事務所スペース等
- 工場の設備機械室
- 人や車両が通行する部分で、間仕切壁等で明確に区画された部分
原動機に含むもの
- 工場の中の原動機はもちろん、敷地内の屋外で使用される原動機
- 大型機械だけでなく、小型電動工具(ドリル、グラインダー等)も含む
- 作業で必要な冷凍装置(冷やして固める等)は含む
原動機に含まないもの
- 作業場の温度管理のために設置する空調設備
- 作業に関係ない、事務所や休憩所に設置する冷蔵庫
となります。
解説しましたとおり、工場はかなり範囲が広く該当するかなとおもったときは該当する可能が高いです。
そうなったときは、建築できる用途地域の制限が厳しいのでご注意ください。
※以上、まとめてみましたが、特定行政庁によって、判断が微妙に違う場合がありますので、建築場所の特定行政庁に確認していただけたらと思います。