防火

延焼のおそれのある部分の防火設備の免除【自動車車庫】

耐火建築物、準耐火建築物や防火地域、準防火地域の建築物は、延焼のおそれのある部分に【自動車車庫】を計画する場合、外壁ラインの開口部は防火設備の設置が必要となります。

しかし一戸建て住宅の自動車車庫や、ピロティ駐車場には、防火設備は設置していない場合がよくあると思いませんか。

防火設備の設置には緩和の基準があり、それに該当する場合は防火設備の設置が不要となります。

 

そこで、この記事では、

はてな

  • 耐火建築物、準耐火建築物
  • 防火地域、準防火地域の建築物

の延焼のおそれのある部分にかかる【自動車車庫】の防火設備設置の不要の基準

について、解説します。

 

特定行政庁ごとでホームページに独自の【取扱い】を出しているところもありますので、この記事では基本的なところを解説します。

防火設備設置不要の2つの取扱い

①誘導車路その他もっぱら通行の用に供し通常車を駐留させない部分

②ビルトイン車庫

  • 側面が開放的であること
  • 燃料の貯蔵(自動車のガソリンタンク内のものを除く)または給油のように供しないこと
  • 同一敷地内における車庫の床面積の合計が30㎡以下のもの

上記の2つの部分については、設置不要となります。

それでは、一つずつ解説します。

 

誘導車路その他もっぱら通行の用に供し通常車を駐留させない部分

自動車車庫の部分で、駐車スペースではなく、駐留しない場所は、設置不要です。

駐留とは、駐車スペースではなく、車路や、乗降する場所などが考えられます。

また特定行政庁によって、乗降をする場所に防火設備設置を求められる場合があります。

それはどこまでを【駐留】としているかです。

とある解説には、【長時間にわたる駐車は、駐留させない部分と判断できる】と記載しています。

 

過去に下記の照会があります。

開放自動車車庫の開放部の取扱いについて(昭和48.2.28住指発110号)

参考

照会

建築基準法第27条または第62条の規定に基づき、耐火建築物としなければならない開放自動車車庫(外壁を有しない自動車車庫をいう。)にあっては、延焼のおそれのある開放部に、耐火構造とした外壁又は防火戸の設置はないもの解してよいかご教示願います。

回答

昭和47年11月15日付け47建第163号で照会のあった該部分は【外壁の開口部】に相当するので、建築基準法第2条第9号の2の規定により防火戸その他の防火設備を設けなければならない。

ただし、誘導車路その他もっぱら通行のように供し通常車を駐留させない部分についてはこの限りでない。

 

ビルトイン車庫(小規模な)の防火設備

ポイント

  • 側面が開放的であること
  • 燃料の貯蔵(自動車のガソリンタンク内のものを除く)または給油のように供しないこと
  • 同一敷地内における車庫の床面積の合計が30㎡以下または50㎡以下のもの

側面が開放的であること

側面が開放の基準は、屋外階段の屋外の判断基準に似ています。

ビルトイン車庫の周長の1/2以上が開放し(外壁がない)、隣地境界線から50cm以上離れていることを基準としているところが多いです。

開放性の基準、隣地境界線からの距離は、特定行政庁によって違うため、ご確認ください。

 

燃料の貯蔵(自動車のガソリンタンク内のものを除く)または給油のように供しないこと

そのままですが、燃料の保管や給油を行わないことです。

 

同一敷地内における車庫の床面積の合計が30㎡以下または50㎡以下のもの

小規模な自動車車庫を免除するということです。

特定行政庁によって、30㎡と50㎡に違いはあります。

病院やお店は、前面の道路側や建物の側面など、複数の場所に駐車場を設けている場合があります。

そういった場合は、すべての自動車車庫の面積で、30㎡または50㎡以下となります。

※50㎡は旧法第24条から、30㎡は自動車車庫の取扱いで、30㎡以下は自動車車庫として取扱わない。としているところからきていると思います。

 

防火設備が不要な場合の外壁・開口部の位置は?

上記の基準により、開口部に防火設備が不要となった場合、外壁・開口部の位置は【自動車車庫の奥の壁】が外壁等の位置となります。

また自動車車庫部分の天井は、外部の扱いとなるため軒天の基準を満たす必要があります。

 

近い考え方として、共同住宅の開放廊下に面して設置するPSがあります。

PSが延焼ライン内に設置した場合は、PSと住戸との間の壁が外壁と考えることができます。

このようなことから、仮に開口部に防火設備が不要となっても、その奥の壁・開口部に外壁、防火設備が求められるようになります。

 

言い換えると、どこかの部分で、外部と内部を区画する外壁・開口部を形成する必要がある。ということです。

大阪府質疑応答(1 − 14)

大阪府の質疑応答1-14(P.14)では、下記のように解説しています。

延焼のおそれのある部分(一戸建ての住宅の自動車車庫の開口部の扱い)

質疑

下図のような一戸建ての住宅の自動車車庫の開口部の扱いはどうなるか。

回答

一戸建ての住宅の自動車車庫で、延焼のおそれのある部分の開口部であっても以下の要件を満足するのものは、防火設備を必要としない。

  1. 自動車車庫内の開口部には全て防火設備を設けること。
  2. 自動車車庫の内装は、壁・天井それぞれに外壁・軒裏と同様の材料を使用すること
  3. 自動車車庫は車一台程度の大きさであること。

自動車車庫例

上記1.2に記載しているように、どこかの部分で、外部と内部を区画する外壁・開口部を形成する必要があります。

 

自動車車庫とは

そもそも自動車車庫とは(昭和29.7.13住指受850)

 

法第条2第2号の自動車車庫とは、道路運送車両法(昭和26年法律第185号)第4条の規定により登録を必要とする自動車(軽自動車及び二輪の小型自動車を除く)を格納するものと解してよいか。

回答

法にいう自動車車庫は、道路運送車両法第2条第2項に規定する自動車即ち、同法第3条にいう普通自動車、小型自動車、軽自動車及び特殊自動車を格納するものであることとして取り扱われたい。

 

根拠条文

法第2条第1項第9号の2(耐火建築物)

次に掲げる基準に適合する建築物をいう。

イ (略)

ロ その外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に、防火戸その他の政令で定める防火設備(その構造が遮炎性能(通常の火災時における火炎を有効に遮るために防火設備に必要とされる性能をいう。第二十七条第一項において同じ。)に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものに限る。)を有すること

 

法第2条第1項第9号の3(準耐火建築物)

耐火建築物以外の建築物で、イ又はロのいずれかに該当し、外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に前号ロに規定する防火設備を有するものをいう。

イ (略)

ロ (略)

 

第27条(耐火建築物等としなければならない特殊建築物)

 次該当の各号のいずれかにする特殊建築物は、・・・、かつ、その外壁の開口部であつて建築物の他の部分から当該開口部へ延焼するおそれがあるものとして政令で定めるものに、防火戸その他の政令で定める防火設備(その構造が遮炎性能に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものに限る。)を設けなければならない

一 (略)

二 (略)

三 (略)

四 (略)

第61条(防火地域及び準防火地域内の建築物) 

防火地域又は準防火地域内にある建築物は、その外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に防火戸その他の政令で定める防火設備を設け、かつ、壁、柱、床その他の建築物の部分及び当該防火設備を通常の火災による周囲への延焼を防止するためにこれらに必要とされる性能に関して防火地域及び準防火地域の別並びに建築物の規模に応じて政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。ただし、門又は塀で、高さ2m以下のもの又は準防火地域内にある建築物(木造建築物等を除く。)に附属するものについては、この限りでない。

 

まとめ

この記事では、

はてな

  • 耐火建築物、準耐火建築物
  • 防火地域、準防火地域の建築物

の、延焼のおそれのある部分にかかる【自動車車庫】の防火設備設置の不要の基準

について、解説しました。

特定行政庁によって、少し違う部分はありますが、基本的な考えはわかりましたでしょうか。

最後に再度、まとめます。

防火設備設置不要の2つの取扱い

①誘導車路その他もっぱら通行の用に供し通常車を駐留させない部分

②ビルトイン車庫

  • 側面が開放的であること
  • 燃料の貯蔵(自動車のガソリンタンク内のものを除く)または給油のように供しないこと
  • 同一敷地内における車庫の床面積の合計が30㎡以下のもの

防火設備が不要な場合はもう一つ奥の壁が外壁・開口部となる

上記の基準により、開口部に防火設備が不要となった場合は、外壁・開口部の位置が【自動車車庫の奥の壁】が外壁等の位置となります。

 

以上となりますが、取扱いは特定行政庁や民間確認検査機関で違う部分もありますので、この記事を参考にご確認ください。

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